アンモニア燃料の実用化について

ビジネス&経済

国内におけるCO2排出量の約1/3は「発電」によることについては、過去の記事で紹介してきました。

アンモニアは燃焼してもCO2を排出しないことから、アンモニアを燃料に活用した発電が注目されています。具体的には、石炭火力とアンモニアの混焼による発電です。石炭火力燃料の一部をアンモニアに代替することにより、CO2発生量を削減することが目的です。

①アンモニアを活用した発電の特徴
②アンモニアの用途・製造方法について
③国内動向
④まとめ
①アンモニアを活用した発電の特徴

 アンモニアは石炭や石油に比べて燃焼した時に発生する熱量が小さく、火炎温度も低いこと等から、その燃焼性はあまり高くないという特性があります。
 また、アンモニアは不完全燃焼を起こすとNOxという有害物質を発生するため、効率的に燃焼させ、NOxの発生を抑制するバーナーの技術開発が進められています

2020年12月7日の資源エネルギー庁の資料によると、直近の目標として、2030年までに石炭火力発電へ20%のアンモニア混焼が掲げられています。実用化が進めば、将来的には、混焼率の向上やアンモニアのみで発電する「専燃」化技術の開発も視野に検討が進められています。

アンモニア発電がCO2削減に与える効果について、国内すべての石炭火力発電にて20%混焼を達成した場合、約4,000万トンのCO2削減が達成できます。その際、アンモニアは約2,000万トン必要となるのですが、現在の世界の全貿易量に匹敵するため、そのサプライチェーンの構築も今後の課題と言われています。


(引用:資源エネルギー庁HP)

②アンモニアの用途・製造方法について

 世界全体でのアンモニアの用途は、約8割が肥料、残りの2割は工業用で、化学製品の基礎材料として合成繊維のナイロンなどの原料となります。現在は燃料としてのアンモニアの用途はありませんが、今後バーナー技術が発展すれば、用途の構成が大きく変化することが考えられると思います。
 
(出典)日本エネルギー経済研究所及びNEXANT(2012年)

製造方法について、アンモニアはハーバー・ボッシュ法という1906年に開発された歴史のある手法により水素と窒素から合成されます。
 1/2N2+3/2H2→NH3
ここでアンモニア発電を考える上でのポイントがあるのですが、皆様お分かりでしょうか。いくらアンモニアで発電することでCO2を減らせると言っても、アンモニアを作る過程で大量にCO2を発生させていたら元も子もないですよね。
政府の考えるスキームは以下の図の通りです。現在は、水素を得るためには石油を原料とするためCO2が発生しておりますが、将来的にはCCSによるCO2の地下貯留を合わせたブルー水素、再生可能エネルギーから生成するグリーン水素を元にアンモニアを生成することが描かれています

(出典:総合資源エネルギー調査会 資源・燃料分科会(2020年12月2日))

③国内動向について

東京電力と中部電力の火力発電事業を統合し設立された「JERA」は2021年2月、アンモニアの自社生産に向けてマレーシアの国営企業「ペトロナス」と覚書を交わし、再生可能エネルギーを使ったアンモニアの生産について検討を開始しました。

今後、製造過程で二酸化炭素を排出しない再生可能エネルギーの電力を使う製造方法を取り入れ、マレーシアでのアンモニアの生産を目指すということです。

また、今年度より愛知県内の発電所でアンモニア混焼の実用化に向けた実証実験を始めるほか、2040年代にはLNG(液化天然ガス)等を使わず、アンモニアだけで発電する設備の実用化も目指すことにしています。

(参考:NHK記事2021年2月9日より)

④まとめ

アンモニアを活用した発電はまだまだ発展途上ですが、カーボンニュートラルの実現に向け、発電等の燃料として今後アンモニアの普及が促進されることと思います。今後の技術開発に期待したいと思います。

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